カルビーフードコミュニケーション
〈酸化〉を食い止めろ!パッケージ開発への飽くなき挑戦【前編】
image

佐藤 徹氏

三和工業株式会社    専務取締役

国内屈指の包装材メーカーで、長年カルビーのパートナーとしてパッケージ開発に取り組む。パッケージコンバーティングのスペシャリスト。


image

高橋 宏氏

カルビー株式会社    SMCグループ 生産管理チーム 原材料調達担当

カルビーにおける資材調達のスペシャリスト。日々、新しいパッケージの開発に奔走している。

開発の幕開け

佐藤

今ではどのメーカーさんも一般的に使われてますが、当時PET蒸着5層フィルムをポテトチップスのパッケージとして一早く採用されたのがカルビーでした。VM-PET (ヴァキュームメタライジング・ポリエチレンテレフタレート)と呼ばれるこの素材は、それまで着物など一部高級品の装飾など限られた用途でしか使われていなかったものを、優れたバリア性に着目したカルビーが採用したんです。

高橋

弊社では昭和50年の秋にポテトチップス市場に参入したのですが、ポテトチップスはじゃがいもを油で揚げているため油分の酸化が早く、中身の品質維持が非常に困難な商品でした。そこで、今までのフィルムでは必ずしも適当じゃないということで、それに変わるものを模索して、いくつかの段階を経て、ようやくこのPET蒸着5層フィルムにたどり着いたのです。

佐藤

カルビーのパッケージ開発の歴史はポテトチップス発売当時の昭和50年から続いていますが、そもそも常温1ヶ月でポテトチップスが湿気てしまう、かっぱえびせんの匂いがするなどの意見がお客様やカルビー社内でも多く寄せられたことが(パッケージ開発の)キッカケだったように記憶しています。

高橋

湿気やにおいといった劣化=「酸化」なんです。油の酸化は風味が落ちることはもちろん、ひどくなると腐臭や、お腹を壊すこともあるほど深刻な問題で、これを防ごうということで新たなパッケージの開発に着手したのです。治験データでも酸化の原因には主に、〈酸素〉・〈温度〉・〈光線〉の三要素があるということがわかっていましたから、酸素透過度、水蒸気透過度の基準値を下げる(バリアすること)で、中身の劣化を防ごうと考えたんです。

佐藤

当時から試行錯誤の連続でしたが、"酸素バリア"と"水蒸気バリア"機能の最適化をはかり、やっとの思いでバリア性に優れた包装材の開発にいたりました。現在でもこのPET蒸着5層フィルムを超えるものはないと言われています。

可視光線との新たな戦い

高橋

また昔とは売場環境も変わってきています。駄菓子屋の店先で売っていた時代から、今はコンビニエンスでの取り扱いが非常に多くなってきています。コンビニエンスは年中24時間営業ですから、つねに蛍光灯の光にさらされた劣悪な環境下に商品が置かれていることが問題視されました。

佐藤

蛍光灯の出す紫外線でも劣化は促進しますからね。しかし、コンビニエンスに対する包装材という考えをお持ちなのは、私が知っているかぎりカルビーだけです。

高橋

もちろん紫外線による品質劣化には前々から対処していたんですが、コンビニエンスの拡大で弊社でも急ぎ、蛍光灯の光も通さないパッケージを開発する必要があるね、という流れに。とくに弊社の商品には葉緑素を含む青海苔やパセリなどを使ったものが多いため、蛍光灯の光があたると酸素が発生してしまう。

佐藤

紫外線だけならUVカットインキをフィルムに塗装することで解決できるんですが、UVカットインキでは可視光線までは遮断できませんから・・・。現在では全光線透過率で管理したフィルムに切り替えています。

中身が見えない ――意外な落とし穴

高橋

バリア性に取り組む一方で、アルミ蒸着に切り替えたことで袋の中身が見えなくなるという問題が浮上しました。今でこそ当たり前ですが、当時は問屋(流通)さんから、中身が見えない商品が売れるはずない、という厳しいご意見もありました。

佐藤

消費者は中身が見えたほうが安心して買えるでしょうが、中が見えることすなわち劣化していくのですから、美味しいものをお届けしようとすれば、今の技術では蒸着膜を厚くして中身を見せない選択は必然だったと思います。

高橋

お菓子に限らず何でも昔は中身が見えることが前提でしたよね。お客様は現物を目で見て「美味しそうだね」とか「色がいいね」とか納得して買われていたわけです。最近ではカタログ販売やネット販売がシェアを拡大していますが。

佐藤

現物を見ないでも買える世代になったということでしょう。

高橋

ようは、生産技術が上がって商品にバラつきがないから、あえて選ぶ必要がなくなったんですよ。今ではスーパーに並ぶキュウリはどれも真っ直ぐですし、たとえば車を買いにディーラーに行って「在庫全部出して並べて」と言う人もいませんからね(笑)ただ当時は、弊社の商品にもまだバラつきがあったし、メーカー格差もものすごくあったので。

佐藤

アルミ蒸着に移行した後も、試験的にパッケージの一部分だけを透明にしてみたり、窓を開けてみたり、いろいろトライされてましたよね。でもやはり一部分でも透明部分があると劣化は進行するので、結局ボツ(笑)

高橋

そこで、消費者の不安を払拭するために、パッケージに商品写真を入れるようにしたんです。ちょうど良質の原料(馬鈴薯)が豊作だった年で、今ならお客様の期待を裏切らない商品が提供できる、ということも後押しましたね。

佐藤

あらためて思い出すと、昭和40年代まではパッケージは単に物を包むもの、遠くへ運ぶものという認識でしかなかったものが、昭和50年にカルビーのポテトチップスが発売されてからは、つねに油に対する劣化=酸化を防ぐ戦いの歴史だったように思います。

高橋

食品である限り、安全であることが大前提。いかに安全を継続的にお客様のもとへ供給するかという信念で、膨大な開発コストをつぎ込んできたんです。

佐藤

14〜15円だった単価が、24〜25円まで跳ね上がっちゃいますけど、本当によろしいんですか?と申し上げても、カルビーさんはそれでもやると言って踏み切られたんです。驚きましたよ。

高橋

当時、全社利益とほぼ同額のコストがかかる一大事業なのに、その時のトップの決断は素早かったです。最初に佐藤さんが言われたように、包装材は本来、食品を包んで遠くまで運ぶという目的で生まれたもので、昔の旅人はおむすびを竹の皮だとか笹の葉だとかで包んで運んでいたけれど、あれがパッケージのはじまりでしょう。より安全に、より遠くに、より鮮度を保ちつつ、ということで絶えず進化してきて、今では単に物を包むだけではなくて、そこに安全とか鮮度とか感応評価とかが加わることで、バリア性などの機能を盛り込まなきゃならなくなった。だから笹の葉っぱじゃ駄目なんです。

消費者の「安全」はメーカーが守る

高橋

食品メーカーである限りは「安全」な商品をお客様へお届けする責任があると思っています。ですから、万が一にでも事故が起きてしまったら困る、お客様から指摘されてはじめて気づくのでは遅い。そういった意味では、安全性という担保に関してはお客様より先にメーカーが歩いていないといけないのではないでしょうか。

佐藤

うちのような包装材メーカーでは「安全」とは「完全密封」を言うのですが、カルビーにおける「安全」の定義は何ですか?

高橋

弊社はお菓子メーカーですから、お客様にいつもおいしく食べていただけることが私たちの「安全」の定義です。だからこそ、厳しい社内基準があり、それにふさわしい包装材でなければならないわけです。「安全」と「安心」とは似て非なるもので、安心感というのはメーカーはお客様には与えられません。メーカーがお客様にお届けできるのは科学的かつ物理的な安全だけなんです。その安全をうけとったお客様が主観的な安心感を私どもメーカーに抱いていただけることが大切なのです。
私たちが挑んできたパッケージ開発の歴史は、いわば消費者の「安全」を確保するための戦いと言えるかもしれませんね。

佐藤

ええ、今後もそれは変わらないでしょう。

編集後記

以前はパッケージと言えば、中身を遠くへ運ぶ為だけの包装材料と考えられていたものが、現在では中身の品質を守る為の重要な役割まで担っているんですね。そう言った意味からすれば、中世の騎士が着ていた甲冑(鎧)のようなものかもしれません。暑さ、寒さを凌ぐだけなら、薄着になったり厚着をするだけで良かったものが、中身の人間を守るためには重量もコストもかかる甲冑を装着せざるを得なかった。カルビーのパッケージは、まさに商品を守る為の現代の鎧と言えますね。

一覧に戻る

出張授業スナックスクールお申し込み おやつとの付き合い方講演会
学習サポート faq
PAGE TOP ↑