カルビーフードコミュニケーション
CO2の「見える化」で見えてきた、カルビーの隠された真実。
image

大内 肇氏

カルビー株式会社    SCMグループ

1990年入社。近畿カンパニー・中四国カンパニーで営業として活躍後、2007年九州カンパニーのCOOを経て、2009年本社SCMグループに配属。現在は、CO2削減プロジェクトの主幹メンバーとして、CO2に関する問題に日々取り組んでいる。

「CO2削減プロジェクト」の幕開け

--

カルビー社内で「CO2削減」に取り組むことになったきっかけをお聞かせください。

大内

きっかけとなったのは、確か昨年の5月8日の新聞記事。その記事には、イギリスで先行して動いている温室効果ガス削減に向けた取り組みのひとつ「カーボンフットプリント(原材料調達〜廃棄・リサイクルまでの全行程におけるCO2の総合排出量を数値化したもの)」について書かれていたのですが、その事例がちょうどポテトチップスだったんです。国が違うとはいえ、同じポテトチップスという商品。私たちにもできるかもしれない。そんな思いから詳しく調べてみると、こうした活動に日本でも積極的に取り組んでいる企業がいくつかあると知りまして、飛込みで経済産業省にお話を聞きに行ったんです。この取り組みには当初20社が参加していましたが、主要小売業、食品メーカーが主で、菓子メーカーの参加はゼロでした。こちらも初心者だったので、そこから二人三脚でいろいろと勉強させていただきつつ、社内でプロジェクトを立ち上げる準備をし始めました。(最終的には30社が参加)

--

その前から、企業として環境への取り組みの必要性は感じていましたか?

大内

もちろん、必要性は大いに感じていました。これまで企業は主に「付加価値」と「コスト」の二本柱で企業競争を行ってきましたが、今後は「環境への取り組み」こそがもう一つの商品購買の選択肢になってくる。すでに欧米では、投資家や消費者が企業を選ぶ上での指標となっていますしね。カルビーとして環境にどう取り組むかを考えている矢先に、この新聞記事に出会ったので、「善は急げ」とばかりに飛び込んだかんじですね(笑)。

--

活動としては、具体的にはどういったことから始めたのですか?

大内

CO2削減と一言で言っても、とりあえずは現実を知らなければ何もはじまらない。ということで、具体的にはまず私たちが日頃排出しているCO2の量を「見える化」することからはじめました。国の指導の下に、全体の排出量、そしてプロセス毎のCO2排出量を算出して数値化し、現状が見えてきたところで、本格的に中期経営計画(3カ年計画の1つとして「CO2削減プロジェクト」を立ち上げました。

--

「CO2削減プロジェクト」の具体的な目標はどういったものですか?

大内

2015年までに現在の30%のCO2を削減すること、そのために全員参加型の環境経営を定着させることです。近々の目標としては、2010年までに2006年対比で12%の削減をゴールに設定しています。

カルビーの事業構造が抱えるジレンマ

--

カルビーでは現在どれくらいのCO2を排出しているのですか?また、それは多い方なのでしょうか?

大内

2006年度の値ですが、カルビーはカルビーポテトも含めて年間約17万トンのCO2を排出しています。食品企業としては多い部類に入るのかも知れません。特に馬鈴薯を育てて、工場へと運搬し、製品へと加工し、販売する。こういった製品サイクルだけ見ると、カルビーの事業構造は一見エコなイメージがあると思うのですが、実はいろいろと落とし穴があるんです。

--

落とし穴と、言いますと?

大内

まず、水分が80%を占める馬鈴薯を畑から貯蔵庫、そして工場まで運ぶんですが、製品化するときには水分の90%以上を飛ばす必要がある。その際には、当たり前ですが多量なエネルギーを使用します。また、チップスやスナックなどの製品は壊れやすいので、壊れ予防のためパッケージの中に製品と一緒に窒素や空気を充填する必要がある。そうするとパッケージの体積が増大し、製品の重量と比較して物流量(トラックの数=体積)が非常に多くなってしまう。その結果CO2の排出量も多くなってしまうんですね。

--

商品の製造方法は仕方ないとしても、たとえばパッケージを小さくしたりすることは難しいのですか?

大内

もちろんメーカーとして少しでも改善したいのは山々ですが、研究を重ねたうえで設計してきた最良のパッケージを小さくするというのは至難のワザ。やはり壊れやすいという商品の特性上、目をつぶらなければならない点も多いのが実情なのです。これは、カルビーの事業構造が抱えるジレンマですね。

--

なかなか解決するのは難しい問題なんですね。

大内

とはいえ、何も悪いことばかりではないんですよ(笑)。カルビーのポテトチップス製品で使っている馬鈴薯は99%以上が国産なんです。馬鈴薯も植物ですから成長の過程で光合成をするでしょう。2006年度は、その光合成だけで日本国内のCO2を約6.5万トン吸収しているんですよ。それに国産原料は輸入原料と比べれば格段に工場や貯蔵庫までの運搬距離も短い。したがってCO2の排出量も少ない・・・こうしたいい面ももちろんあるんですけどね。

CO2削減における2つの柱

--

あと6年で、30%削減という目標を達成するのは大変なことではないですか?

大内

そうですね、かなり革新的なことをやらないとなかなか難しいのは事実です。現在、私たちが具体的に始めている取り組みは大きく2つあります。

まず1つ目は、エネルギーの革新によるエネルギー使用量の抜本的な削減。工場内の設備を重油からバイオマス燃料や天然ガスなどの燃料への切り替えをするなど、より高効率のエネルギーに変える最新式設備を整えることで抜本的なCO2削減を図ります。これにはもちろん多額の投資をする必要がありますが、今後の企業の在り方を考えると避けて通れないと考えています。大規模な方法なので一度に進めるには難しい部分も多いんですが、中長期的に行っていく予定です。

また、輸送面では長距離輸送をエネルギー効率の良い鉄道輸送への転換(モーダルシフト)や、工場廃油からの燃料転換(BDF)を計画しています。

次に2つ目は、現在すでにどこの部署でも実施している「ロス削減活動」と「CO2削減活動」をリンクさせること。たとえば、カルビーでは現在1日約300万袋のスナックを作っていますが、仮にその中の0.1%のパッケージがロスになるとすると毎日約3千袋を捨て続けることになります。金額的な部分はもちろんですが、その分だけCO2も余分に排出していることになるんですよね。ということは、ロスが減れば、CO2も同時に削減することができる。そこで、今後はこれまでの金額試算と一緒に同時に余分に排出しなくて済んだCO2の量も表示することで、社員はもちろん関係者ひとりひとりの意識向上を図っていきたいと考えています。現在は各カンパニーに専任を一人指名して、人材育成に取り組んでいる最中です。今後は、各部署を比べた際に、排出量が多いところには積極的に支援させていただくつもりです。

全員参加型のCO2削減を目指して

--

多額の投資を伴う大きな改革とひとりひとりが気をつけて削減する小さな努力、両方が必要なわけですね。プロジェクトが始動してから、社員の方の意識は変わりましたか?

大内

そうですね、まだ始動から半期しかたっていないのでこれからの部分も多々ありますが、現場では徐々に広がってきています。ただ、やはりそれは生産現場や物流現場において実際CO2排出に関わっている人たちが中心で、直接携わっていないデスクワーク主体の部門の社員にまではなかなか伝わっていないのも現状です。そんな現状を打破するためにも、全員参加を掲げ、品質マニュアルの中に環境管理規定をプラスするなどマネージメント体制を整備するとともに、今後は社内にも随時CO2の見える化をはかっています。ただ、そういったマネージメントの部分ばかりでなく、何かもっと全員で楽しんでCO2削減できるしかけが必要だなと感じています。社員はもちろん、業界全体、ひいては消費者まで巻き込んでいけるしかけができるのがベストなんですけどね…。今は、それがもっぱらの課題です。

--

そういった意味では、先に出た「カーボンフットプリント」への取り組みなどは、業界や消費者に向けたひとつのしかけですよね。

大内

そうですね。カーボンフットプリントというのは、前でも少し説明しましたが、材料生産〜商品廃棄までの一連の製品ライフサイクルの中で出たCO2排出量の合計を数値化したもの。これらを製品パッケージにプリントすることで、事業者のCO2削減努力をアナウンスするとともに、お客様に対しても日常生活の中でのCO2削減をうながすアプローチになると考えています。私たちもイギリスのポテトチップスメーカーに習い、試作品を作るなど試験的に開始しました。

--

ただ、消費者はまだそこまでCO2削減について自分の問題として捉えてはいない気がするのですが。

大内

だからこそ、まずは日常生活のどこかで少しでも気づいてもらうことが大切なんです。そのためには国はもちろん、私たちメーカーから訴えていくことも重要なんですよね。特に、カーボンフットプリントという取り組みは、私達カルビーだけがやっていても意味がない。メーカー各社が切磋琢磨しあうことで、お客様に「CO2排出量」という次なる選択指標を生み出していくことこそ、全体を巻き込んだいわゆる「全員参加型」のCO2削減が実現できる。サッポロビール様が3月から北海道で試験的にカーボンフットプリントの導入を始めると聞いていますが、その後に続いてカルビーも食品メーカーの先駆けになれればいいと考えています。

CO2の「見える化」で見えてきた、カルビーの今後

--

最後になりますが、この「CO2削減プロジェクト」の意義とは何でしょうか?

大内

カルビーがお客様に今後継続的に支持され続けるためには、「環境問題への貢献」は企業として避けては通れない道です。その中でも「CO2削減プロジェクト」は大きな軸。社内はもちろん、原料サプライヤー様から小売業者様までカルビーを取り巻く多くの関係者、また菓子メーカーひいては食品メーカー、最後は消費者までいろんな方々を巻き込んだ全員参加でのCO2削減活動の一助となればいいなと思っています。

--

今後は具体的にどういった取り組みをされていく予定ですか?

大内

各プロセスにおいて「見える化」したCO2を、あらゆる方法で削減につなげていきます。 また、エネルギーの切り替えなどハードの部分に対する取り組みはもちろんですが、企業存続という意味ではソフトの部分、特に環境に詳しい人材をもっと育てて行かなくてはならないと考えています。

編集後記

一朝一夕には効果が現れないCO2削減だからこそ、一日でも早い取り組みが必要なのですね。しかも、社員全員の意識を改革する必要があるとすると、今後の道のりは決して平坦では無いような気がします。しかし、こう言った取組みが企業存続のカギとなる事は必然ですし、消費者の企業を見る目がどんどん厳しくなっていく事を考えれば、やはり避けては通れない事業課題なのだと思います。今後もこの活動を注視し続けて下さい。ご苦労様でした。

一覧に戻る

出張授業スナックスクールお申し込み おやつとの付き合い方講演会
学習サポート faq
PAGE TOP ↑