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2008.12.01

北海道・千歳工場の救世主

「じゃがポックル」開発の知られざる舞台裏

千歳工場を救ったのは、あの「じゃがポックル」だった――!?
地域限定商品開発に込められた、千歳工場の熱きこだわり。

長浜 由尚氏

カルビー株式会社
北部カンパニー ポテトファームブランド
商品企画・マーケティング担当

異業界からの転職後、営業・マーケティングオフィサーを経て、2001年に千歳工場の存続をかけた新規商品企画・開発担当に抜擢される。大ヒット商品「じゃがポックル」の産みの親の一人。

千歳工場の存続をかけた、新規事業への取り組み

はじめに、千歳工場が新規事業に取り組むことになったきっかけをお聞かせください。

長浜

1990年代後半まで、千歳工場では北海道から北東北エリアまでの商品供給・配送をまかなっていました。しかし、栃木に生産量の大きい新宇都宮工場が完成したことで徐々に供給エリアが縮小し、2000年には北海道エリアのみの供給となり、結果的には生産量自体が半分になってしまったんです。このままでは工場の存続も厳しいという危機感から、千歳工場の命運をかけた新規事業をスタートさせようということになりました。

そこからすぐに、新商品を開発しようという話になったんですか?

長浜

いいえ、ほとんど手探りからのスタートだったので、当時はレストラン経営や新規市場への参入など、本当にいろんな事業が候補にあがっていました。しかし採算などを考慮すると、北海道でやるには難しいものも多くて・・・。そんな中で目をつけたのが、年間約1800万人が利用する新千歳空港という特殊なチャネル。北海道といえば「観光と農業」が主力なので、じゃがいもの主産地である北海道ならではのこだわりの土産用商品を開発すれば、観光市場にうまく参入できるのではないかと考えました。

はじめての観光市場への参入にあたり、まず始めたことは何でしたか?

長浜

いきなり新商品を出すのは難しいので、最初は既存商品の北海道限定フレーバーなどを作って試したりもしたんですが、やはりフレーバーの違いだけだとある程度は売れてもそれ以上はどうしても難しいんですね。そこで、北海道産の原料だけでこだわりのオリジナル商品を開発しようといろいろ模索していた時に、本社で研究・開発していた「じゃがポックル」の原点とも言える特殊な製法に出会ったんです。これが「じゃがポックル」開発における長いみちのりのはじまりでした。

試行錯誤を繰り返した、製品開発の現場

数ある製法の中から、その製法に注目したのはなぜですか?

長浜

この製法はもともと、小さい子どもやお年寄りでも食べやすく美味しいスナックを完成させたいという思いから、カルビーの創業者が最後までこだわり続けていた秘伝の製法。ただ大量生産に向かず全国で商品化するのは難しかったため、これまで製品化されていなかったんです。
この製法にした決め手は、サクサクとした今までにない食感はもちろん、素材そのものの味を引き立たせることができるので北海道産のじゃがいもにぴったりだったこと。また、形がスティック状なので食べやすく、コンパクトに包装できることもポイントでしたね。土産用の商品は、味・品質はもちろんですが携帯性が特に大事なのでそこを重視しました。

製法の採用から製品化までは、スムーズに進みましたか?

長浜

いえいえ、とんでもない。実際は工場にラインを入れてからが大変でした。テストレベルで作っているときは、一度に作る量も少ないのでサクサクと美味しい食感になるんですが、工場ラインで大量生産するとどうしても堅くなったり色が悪くなったりするんですね。今でこそ笑って言えますが、最初はほとんど手作りでしたよ。じゃがいもを包丁とまな板で切ったり、できあがった商品を手ですくってパッケージしたり(笑)。そうやっていろいろ試行錯誤を繰り返し、最終的に製品化できたのは2002年。新たに「ポテトファーム」というブランドを立ち上げ、「ピュアじゃが」という名前で発売しました。最初の頃は、採算なんて度外視で、売っても売っても赤字が続く状態でしたね。

カルビーというブランドではなくポテトファームというブランドで発売したのはなぜですか?

長浜

もちろんカルビーブランドで出すほうがお客様にとって安心感はあると思うのですが、カルビーのお菓子の延長線上に見られるのは避けたかったんですね。できれば六花亭さんやロイズさんなど、北海道を代表するお菓子メーカーと肩を並べるくらいの商品を作っていきたいな、と。そういった強い想いをこめて、ブランド名を新たに作りました。

地域限定商品だからできた、リアルマーケティング

千歳工場の命運をかけて発売された「ピュアじゃが」。発売後の評価はいかがでしたか?

長浜

それが、思ったようには売れず・・・。なぜなのかを解明するため、発売後、商品購入者アンケートやマネキンによる試食アンケートでマーケティング調査を実施しました。なかでも一番多かったのがパッケージに関するご意見でしたね。北海道を連想させるじゃがいも型のパッケージでプレミアム感を出したのですが、箱の形状が売り場で積みにくい、持ち運ぶには大きすぎる、4個入りだと少なすぎて配れないなど、多くのご意見をいただきました。開発当時からコンパクトな包装を心がけてはいたのですが、それでも認識が甘かったようです。

なるほど、土産品ならではのご意見が出てきたんですね。味に関してはいかがでしたか?

長浜

味・品質に関しては概ねご満足いただけているようでしたが、堅い・塩辛いというコメントもいくつか見受けられました。もともとこの商品は20代〜30代女性を対象に作った商品なのですが、年配の方からのご意見が特に多かったので調査してみると、実際はターゲットよりも年齢層が上の方が買っているという結果が出たんです。土産品は、普段スナック菓子を食べないターゲットを含めて、全ターゲットに向けて考える必要があるんだということを痛感しました。

そういったリアルなお客様の声を聞けるのは大きいですね。

長浜

そうですね。直接買ってくれた人からの意見を聞くのが一番早いですからね。あとはチャネルも限定されていたので、こういった調査の結果を真摯に受け止め、すぐに商品に反映できるのが、ナショナル展開の商品にはできない地域限定商品ならではのいいところだと思います。

お客様との二人三脚で歩んだ、大ヒットの道のり

そうしたお客様の意見を取り入れつつ、改良してできあがったのが今の「じゃがポックル」なんですね。

長浜

はい、発売後9ヶ月でリニューアルというスピード技でした。お客様のご意見をもとに味や包装などに改良を加えるとともに、ネーミングも覚えてもらいやすい名前に一新し、より携帯性に優れた薄いパッケージにしました。おかげで当初使用していたじゃがいも型パッケージの大量の在庫処分に苦しみましたが、結果的には成功したので今ではいい想い出です(笑)。

リニューアル後は、とんとん拍子に人気が出たんですか?

長浜

2003〜2004年にかけて何度も市場調査をかけながら商品価値を高めつつ、それと同時期にリピーターの方から徐々にクチコミで広まっていったかんじです。テレビの情報番組で特集されてからはずっと欠品が続いている状態ですね。

生産量が限られているのは、やはり作るのに時間がかかるからですか?

長浜

「じゃがポックル」は極端に生産性が低く、作る全行程を合わせるとチップの約20倍の時間がかかるんです。今も工場は24時間フル稼働しているのですが、それでも生産が追いつかないのが現状です。商品の安定供給のため日々尽力していますが、お客様にご迷惑をお掛けしている状況が続いています。

「じゃがポックル」の今後の課題と取り組み

地域限定商品「じゃがポックル」が成功した秘訣は何だったと思いますか?

長浜

地元・北海道という土地に立ち返り、北海道の自然の恵みをいかに一番美味しい製法で全国に届けるかにこだわり抜くことで、徐々にお客様の信頼を得られたこと。あとは、やはり新千歳空港という特殊なチャネルの存在に気付けたことだと思います。どちらも北海道だからこそできることですよね。

「じゃがポックル」の今後の課題は?

長浜

生産量を増やすことのみに注力すると、品質がおろそかになっていってしまうことがあります。だからこそ、食感や味はもちろん、全てをきちっと標準化し、より安定した品質を保つことが課題ですね。もちろん商品自体の改良は、いまでも継続しています。今後も引き続き北海道産のじゃがいも本来の美味しさを追求していきたいと思っています。

千歳工場としての今後の目標と取り組みについては、どうお考えですか?

長浜

まずは、ポテトファームというブランドをしっかり確立していきたいですね。メイン商品である「じゃがポックル」の品質を維持させながら、今後もオリジナリティのある商品を作り続けていければ、地元のお菓子メーカーと肩を並べてやっていけると自負しています。北海道という立地を活かし、美味しさにこだわった商品をどんどん全国に届けていければいいなと思っています。

お客様の声を反映して・・・と一言で謳う事は簡単ですが、実際にはなかなか実現できないのが本音。そんな中、特殊なチャネルを選択したとはいえ、お客様の要望を一つ一つ拾い上げ地道に商品改良へと繋げた手法とその努力は、他の商品開発にも活かす事が充分可能なのではないでしょうか。北部カンパニーはもちろんその他の地域カンパニーの動向にも、今後は目が離せませんね。ありがとうございました。

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