北海道じゃがいも物語
北海道じゃがいも物語
ホテとチップス 北海道じゃがいも物語

カルビーポテトチップスを食べている方に、
じゃがいものふるさと=生産地について、
さらなる親しみを感じてもらいたい。

契約生産者と二人三脚※で40年以上も
おいしいじゃがいもづくりに取り組んでいること、
つくる人の顔が見える安心感や、
そこには想いやこだわりがたっぷりあることを
伝えたい。

素材のこだわりを、北の大地からお届けします。

※カルビーポテト(カルビーグループ会社)には、地域の契約生産者をサポートするじゃがいも栽培の専門家・フィールドマンがいます。契約生産者と一緒に二人三脚でじゃがいも作りに取り組んでいます。

ポテトチップスなどの原料となるおいしいじゃがいもを育てるため、カルビーでは約1000軒もの北海道の農家さんと契約を結んでいます。

北海道各地に点在する契約農家さんとの橋渡し役を担うのは、グループ会社「カルビーポテト」の「フィールドマン」。じゃがいもの生育サポートなどを行う、アドバイザー的存在です。

帯広市の中〜南部に位置する帯広市・川西エリアに、契約生産者の安田宏志さんを訪ねました。今年栽培しているじゃがいも畑の面積は約15ha。広すぎてピンと来ませんが、東京ドーム3つ分の広さというから圧巻です。

安田さんは27歳まで会社員として社会人経験を積み、家業である農業の世界へ。農業に真摯に向き合う農家さんです。
ここ数年気候変動が続く中、いつどんな管理をするのが適切か、判断に迷うことも少なくないと言います。
「フィールドマンはいものプロ。蓄積したデータに基づくアドバイスや選択肢を示してくれるのは心強いよね」。

そんな安田さんを担当するフィールドマンの森和美さん、そして別の地区を受け持つ足立心さんにお会いしました。フィールドマン歴はまだ浅いおふたりですが、いもについてがっちり学び、細やかな視点で生産者をサポートしています。

カルビーポテトでは毎年夏に数回、契約生産者を対象に「青空教室」を開催。地域の生産者が畑に集まり、

生育状況を確かめながら、今後の対策を確認する勉強の場であり、農繁期には忙しくて会えない生産者同士、またフィールドマンとの懇親の場でもあります。
「地域で質の高いいもづくりを目指しているので、いろんな情報交換ができる機会をつくってもらえるのはありがたいね。“川西のいもはやっぱりおいしい“といってもらえるよう、今年もいいものをつくりますよ」と、安田さん。

生産者とフィールドマンは、栽培の段階からより質の高いおいしさを一緒につくり上げていく二人三脚の間柄。原料にこだわるポテトチップスのおいしさの一端が見えたような気がします。

十勝エリア発祥の地といわれる豊頃(とよころ)町に、この地域を支える元気な生産者に会いに行きました。

満面の笑顔で迎えてくれた川口知紘さんは、川口農場の4代目。若手生産者のムードメーカー的存在です。
村上剛丸(たけまる)さんは、川口さんの幼なじみ。北海道では気候的に栽培が難しい空豆づくりにも力を入れています。
そして、遠藤亘さんはシステムエンジニアから農業へ大転身。「農業は最高に面白い仕事」と笑顔で語ります。

40人ほどいる豊頃町の若手生産者を代表して、こちらの3人にじゃがいもづくりで大切な土づくりについて話をうかがいました。

多くの生産者が口をそろえていうのは、「農業の基本は土づくりから」。“土をつくる“とは、どういうことなのでしょう。
「継続的にいいものを取り続けるためには、土の中にいる良い菌や微生物の力が必要。菌や微生物が健康で活性化する環境を整えて、地力(生産力)のある畑をつくることが、土づくりです」。

そのために、どんなことをしているのか気になります。
「土の状況に合わせて堆肥(たいひ)を入れたり、緑肥をすき込んだり(※)しています。堆肥で代表的なのは、牛ふんや麦わらなんかを微生物がほろほろに分解したもの。畑に入れると微生物を増やし、水はけが良く、かつ保水力のあるいい土壌にしてくれます」。

緑肥はどんな働きをするのですか?
「緑肥用の作物を植えると、土中の余分な養分を吸ってバランスを均一にしてくれる働きがあるんです。畑にすき込むことで、長い年月をかけ微生物が分解して、

※すき込むとは肥料や堆肥、
 緑肥などを加えながら耕すこと

堆肥のような働きをしてくれる。長期的な視野で土づくりをしています」。
川口さんのじゃがいも畑は前日大雨が降ったせいで表面は濡れていますが、少し掘り返すと中はふっかふか。きちんと土づくりをしている証拠です。健康な畑にはじゃがいもの根がしっかり張り、茎も葉もスクスク育ち、光合成で得た養分でじゃがいもが大きくおいしく育ちます。
生き生きと生命力あふれる土は、ポテトチップスのおいしさにつながるのですね!

ほかの作物と違い、じゃがいもは種から育てません。「種いも」と呼ばれる特別なじゃがいもを植えるのが特徴です。
この種いもは勝手に作ることができない法律があり、専門の生産者が一手に栽培を担い、国の厳しい検査を通ったものだけが種いもとして出荷されます。

この種いもをどう植えるのか、菅原美喜雄さんに話を聞きました。
菅原さんは旭川市の北に位置する士別市を拠点に農業を営むほか、車で20分ほど離れたお隣の剣淵町にも大きな畑を持ち、両方を行き来しながら耕作しています。

種いもは植える前に行う大切な仕事があります。
“芽出し“というひと手間を加えることで、発芽率と生育の良さが格段に違ってくるんです。
コンテナに入った大量の種いもを雨除けの倉庫に運び、シャッターを開けて太陽の光を当てることで、種いもが休眠状態から目覚めて発芽します。これが芽出しです。

「理想は太い健康な芽が出ること。不健康な芽はひょろっとして折れやすい。そうならないようにしっかりと光を当て、適度な温度と風通しの良さも必要です」。

芽出しが終わったら、いよいよまき付け作業に入ります。一般的には畑を耕し、肥料を散布し、種いもをまき、培土(土寄せ)をするという工程を何回かに分けて行います。

菅原さんの全自動のポテトプランター(植え付け機械)は、この工程を一度にできる最新型!機械が何度も畑に

入ると土を締め、水はけや空気の通りが悪くなりますが、その点、この最新型だと土への負担は最小限。
土づくりと、地力を大切にしている菅原さんの畑は土がやわらかくふかふかです。

「今年は雨をもらうことが多いけれど、夏らしい天候が続けば収量は良さそうだね」と、菅原さん。

種いも生産者から菅原さんへ、そしてカルビーへ。仕事への思い、品質へのこだわり、味への自信…。ポテトチップスには、さまざまなバトンで繋がれたおいしさが詰まっているのです。

「以前は地図に残る仕事をしていました」。そう笑顔で話すのは、世界自然遺産・知床を擁する斜里町で新規就農した森賢一さん。横浜出身の森さんは、35歳まで鳶(とび)職として横浜ランドマークタワーや東京ディズニーシーなど、数々の有名施設を担当していました。
農業の世界に入るきっかけは、東日本大震災。災害時に近くに頼れる存在がいないことや子育て環境を考え、一年間悩んだ末に妻・千晶さんの実家の農業を継ぐ決心をしたと言います。

じゃがいもに限らず、農作物は植えればそのまま育つものではありません。収穫まで細やかな世話が必要です。それを管理と言います。
「最初の管理はいもを植えた後、草がえばる(威張る)前に草退治をしなければなりません。ある程度成長すると1週間~10日ごとに、状況に応じた防除が必要です」。

防除とは、農作物に悪影響を与える病害虫を防いだり、雑草を取り除くこと。ただ病害虫が発生してしまっては遅いので、治療ではなく予防が何よりも大切。予防の

ために薬を与えたり、元気がないようなら栄養剤をあげたりと、そこは人もじゃがいもも一緒ですね。

森さんのじゃがいも畑は2カ所に分かれ、合計7.5haもあります。この日お邪魔した畑は約5ha。東京ドーム1つ分です。
この広い畑をどうやって管理しているのですか?
「畑全部をくまなく見ることはできませんが、手前に植えた数列は畑の中に入って歩いてじっくりチェックします。茎が弱々しくないか実際にさわって感触をみたり、葉の裏も見て病害虫の予兆がないかを確認したりしますね」。このエリアは風が強く、じゃがいもの樹が倒れるとそこから傷んで病気になることもあるため、春から夏にかけての成長期は特に気にかけているのだそうです。

茎が太くなり葉が茂った状態を維持できれば、収量は期待できると言います。「収穫まで気は抜けませんが、今年はここまで順調なので、おいしいいもを届けられると思います!」。

じゃがいも畑をバックにいい表情を見せるのは、美瑛町「農事組合法人 柏台生産組合」のみなさん。1973年に法人化し、今年創立50周年を迎えました。
組合長の岡田直和さんは、全国から集まった従業員と一緒に農業に従事。何気ないやり取りからも仲の良さがうかがえます。

柏台生産組合はじゃがいも畑だけで60ha、管理する畑の総面積はなんと250ha! 東京ドーム50個分の広さに相当するというから驚きです。「みんな率先して動いてくれるので頼もしいですよ。このメンバーがいるからこの面積を維持•拡大できると思っています」。

美瑛といえば、波状の丘陵地に連なる田園風景が有名ですが、柏台生産組合の畑も傾斜地に点在して広がっています。平坦ではない60haもの広大なじゃがいも畑をどう収穫するのでしょう。その辺りの話をうかがいました。

じゃがいも畑全体が茶色く枯れたら、いよいよ収穫の合図!収穫は⇒6人×2チームで行います。1人はトラクターを運転しながら、収穫機が掘り進む速度や回転数を調整するオペレーター役。残る5人は機上でいもの選別に徹します。

カルビーのグループ会社•カルビーポテトが新じゃがいもを受け入れる期間は、9月~10月中旬の約1カ月半。大型の収穫機を使うと一日2haを掘ることができるので、単純計算でも収穫が終わるまで30日は優にかかります。

ただ、大雨が降ると土が乾くまで畑に入れない日が2~3日続くことも。ほかの仕事も並行して行う秋は忙しいので、アルバイトさんの手配も必要。天気予報とにらめっこしながら、点在する畑の地形や土の個性を考慮しながら、どんな予定を組むのかすべては岡田さんの采配にかかっているのです。

「柏台生産組合は、美瑛の契約生産者の中で一番大きな面積を持っています。特に丘陵地の場合、面積が大きいほど収穫の判断は難しいものがあります。でも、必ず期間内に収穫を間に合わせる岡田さんの計画力と実行力はすばらしいと思います」と、担当フィールドマンの本田一光さん。

「一年かけてつくってきたいもなので、良い状態で良いものを掘りたい。美瑛のいもはいいよねって、食べる人にも喜んでもらいたいですからね」。そう語る岡田さんの笑顔が印象的でした。

カルビーポテトの契約農家さんにお会いすると、「じゃがいもの選別基準がとにかく厳しい」とみなさんおっしゃいます。
①粒ぞろいであること(規格サイズが定められている)
②病気や障害がないもの、
③表面に打撲やキズがないもの。
書き出すと選別基準は3点ですが、1haの畑から平均約30tものじゃがいもが獲れると言われているので、その5倍、10倍、それ以上の面積を持つ契約農家さんにとって、その量を選別する作業は想像するだけでも大変そう!

ここで少し解説しますと、ハーベスター(収穫機)で掘り取られたいもは、コンベヤでどんどん機上に運ばれます。ここで選別作業を行い、規格品とそれ以外に分けていくのです。

「機上選別だけでは規格外品は取り切れません。規格外品が多いと評価は下がるので、栽培の作業工程をしっかり行い、規格外品を少なくすることが大切なんです」と、大藤哲裕さんが教えてくれました。

大藤さんのじゃがいも畑は、北海道の北東部に位置する小清水町のなだらかな丘陵地にあります。
大藤さんは自動車関連の企業に就職後、実家に戻り就農。細やかな仕事で収量を上げる、超努力家の生産者と地域でも評判です。父・勉さん、母・久子さんも大藤さんをサポートしています。

もう少し詳しくうかがいました。じゃがいもは光に当たると緑化するので、種いもを植える時の深さに気をつけ、成長時に土を盛って光を防ぐ作業が欠かせません。また、畑をつくるタイミングを間違うと、収穫時に土の塊ができて余計な選別が増えてしまう。毎日畑を見て、天気を読んで、病気が付かないよう予防することも重要…などなど。挙げればキリがないのですが、「一つ一つを丁寧にすることを心掛けています」。

世界一厳しい!?と言われるカルビーポテトの選別基準ですが、日々の丁寧な仕事の積み重ねが、ポテトチップスの品質の高さに結びつくことがよくわかりました。

工場のこだわり

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ライター 小西由稀 ライター 小西由稀