2025/07/02

【種まき体験レポート】島・人とのつながりから、生まれた希望をつなぐ旅

2025年6月、粟島で3度目となる「一人娘」の栽培体験(播種)ツアーを開催しました。
一般からの参加は、2022〜2024年のツアーにも参加いただいた方、新たにご応募いただいた方など15名。2泊3日で行われたツアーの様子を、7度目のツアー参加となる新潟市在住のライター・ヤマシタナツミさんがレポートします。

ライター|ヤマシタナツミ
新潟市生まれ。新潟大学農学部卒。「人と地域の希望をつむぐ」をテーマに取材し物語をかくライター。記事のほか小説など、つたわるかたちを探索しています。

Webサイト https://www.yamashitanatsumi.com

今回、7度目となる粟島行きのツアーに参加しました。
種まきを行う栽培体験(播種)ツアーの行程は、これまでのレポートでも詳しくお伝えしましたので、今回は観光としての粟島の見どころやツアー参加者へのインタビューをたっぷりお届けします!

>>2024年度までのツアーレポートはこちら(記事一覧)をご覧ください

島を知り、人を知る、期待ふくらむツアーのはじまり

ツアー1日目の6月6日。梅雨入り直前で、雨が心配されましたが……今回も天気に恵まれ、青空の下、粟島に到着しました。

到着するとまずはオリエンテーションと昼食へ。島のことを学んだり、参加者同士で交流したり、島やツアーの雰囲気に慣れてもらう時間となりました。

今回、粟島にやってきた参加者のお住まいは、福島県、新潟県、石川県、長野県、群馬県、東京都、神奈川県、佐賀県の8地域。

出身地がアメリカ、オーストラリアという方もいて、お2人には「フルグラをよく食べている」という共通点も。今回もさまざまな方が集まってくれました。


【初めて参加した方】

「大学で地理を勉強していて、普段は奄美で島の研究をしています。人との関わりに興味があって来ました」

「主人が朝食としてフルグラを食べていたことから、今回応募しました。昨年は他の会社の田んぼツアーに参加していて、農業体験は2回目です」

「粟島に来るのは、島開きと今回で2回目です。もともと粟島に興味があり、調べていたときにカルビーさんの取り組みを知って、参加したいと思いました。」

【リピーターさん】

「今回で4回目です。島と人の魅力、カルビーの皆さんの人柄に触れて、何度でも来たいと思っています」

「5回目の参加です。粟島で過ごすと、とても健康になれるので、また来ました」

※ツアー参加者のお声を抜粋して掲載しています

オリエンテーションの後は、島のお母さんたちに教わるお菓子づくり。

今回は「一口饅頭」をつくりました。饅頭の生地は小麦粉、黒糖、炭酸(重曹)とシンプル。できあがった生地であんを包み、笹の葉にのせて蒸しあげます。

大きなサイズになったものもありましたが、思い思いの「一口饅頭」が完成。

それから蒸し器で加熱すること15分。
ツアー参加者からは「いい香り!」と声があがりました。できたてほやほやの温かいうちにいただくと、どこか懐かしいコクのある味わい。新潟名物「ぽっぽやき」にも似た、おいしいお饅頭でした。

1日目のプログラムはお菓子づくりで終了。荷物を持ってそれぞれの民宿に移動しました。

私が今回泊まったのは、オリエンテーションやお菓子づくりを行った島の公民館から歩いて10分の「民宿なおや」。部屋は畳・障子のある和室。懐かしい雰囲気ながら、テレビ、エアコンもあります。

この日の夕食は民宿で、サザエ、タイの焼きものとお刺身、ギンバソウの酢の物、ウマズラハギの煮付けなどをいただきました。食事内容は季節ごと民宿ごとに変わるため「何が出てくるかな?」と毎回楽しみにしています。

夜9時になると「今日も1日お疲れ様でした」から始まり「火の用心」を呼びかける島内放送が聞こえてきます。長く続いてきた島の暮らしを感じるひとときです。

畑へGO!ピンクのTシャツを着て一致団結

ツアー2日目、6月7日はいよいよ畑で種まきを行います。作業に備えて、朝食をしっかりといただきました。

2日目の集合場所である島のおみやげ屋さん「ばっけ屋」に向かう道すがら、集落を歩いてみました。

宅地の少ない粟島では、家と家が寄り添うように立っていて、道幅がとても狭くなっています。普段暮らしている場所との違いを楽しみつつ歩いていくと、港で漁師さんの姿を見ることができました。

ばっけ屋に集合後は、島のみなさんとツアー参加者の皆でおそろいのTシャツを着て畑へ向かいます。2025年の「miinoTシャツ」は島のお母さんたちの希望もあってピンクに。畑ではとても映えていました!

まずは皆で写真撮影。ここから行った種まきの詳しい作業内容は、2023年の記事【種まき体験レポート】人と畑が「好き」でつながる、粟島「一人娘」の縁むすびや2024年の記事【種まき体験レポート】持続可能な未来を想い「一人娘」に向けるまなざしをご覧ください。

今年はあらかじめ畝(うね)をつくってあったため、2023年と比べてかなりスムーズ。熱中症予防のため休憩をはさみながら、午前中で作業を完了することができました!

今回は粟島観光の見どころもたっぷりお届け

種まき後、お昼休憩をはさんだ午後からは自由行動の時間です。今回はリピーターとしてツアーに参加していた3名の島一周サイクリングをお届けします!

自転車のレンタルは粟島港にある観光協会で。島一周の場合はアップダウンがあるためアシスト付き自転車がおすすめです。今回のルートは北周りで、景色を楽しみながら進んでいきました。

釜谷には磯の風味豊かなラーメンで知られる「かもめ食堂」や、おみやげ屋さんがあります。

今回はおみやげ屋さんに立ち寄り、テレビでも紹介されたという「干しタコ」を買ってみました。お店の方にお話を伺うと、1匹丸ごと干したタコは全国的にも珍しく、京都など他県からわざわざ買いにきた方もいるとか。

お店にたくさん並ぶ干しタコ。昨年は特に豊漁だったそうで「まだまだあるよ」とのこと。あらためて粟島の豊かさを感じました。

釜谷を離れ、再びサイクリングロードを走って八幡鼻展望台へ。

自転車を降りた後も、徒歩で登り降りしながら岬を目指し、展望台に到着。ツアー参加者のみなさんと一緒に達成感を味わいました!

サイクリング終盤、島の南側、海のすぐそばにある「あわしま牧場」に立ち寄りました。こちらでは予約制で乗馬体験をすることができます。

私たちが訪問したときは、粟島に離島留学をしている子どもたちが馬のお世話をする時間で、馬のことや島での暮らしについて、話を聞くことができました。

約3時間でゴールの粟島港に到着し、島一周サイクリングを終えました。 ちなみに途中で遭遇したカルビーの社員さんは、アシストなしの自転車で島を一周したとのこと!体力に自信のある方はぜひ挑戦してみてください!

汗をかいた後は、粟島港から徒歩3分の場所にある共同浴場「おと姫の湯」へ。島民の方も利用する人気スポットで、お風呂上がりのビールやアイスを楽しみにする方もいるようです。

手料理とじゃんけんで、活気あふれる交流会

2日目の夕食は、恒例となっている島のお母さん、漁師さんたちによる手料理でした。

おしながきに書いてあるだけでも7品もありますが、他にも差し入れをいただいて10品と豪華に。飲み物はビールやチューハイ、ソフトドリンクなどから自由に選び、全員で乾杯!

ツアー参加者、島のみなさん、カルビー社員さんが混ざり合って、畑作業の労をねぎらいつつ、にぎやかに交流しました。

そしてこれまでのツアーで人気だった「グッズ争奪じゃんけん大会」も開催。miinoの新旧ブランドマネジャー2名の掛け声に合わせて「じゃーんけーんぽーん」と、一体感を感じる時間となりました。

交流会の終わりに、このプロジェクトの発起人のカルビー藤東さんより2025年から粟島プロジェクトの担当となった長濱さんの紹介も。これまでにも多くの関係人口が生まれてきましたが、新しい仲間が加わりながらプロジェクトが継続することで、さらに広がっていくといいなと思いました。

離れがたい想いを胸に、旅の思い出を刻む

ツアー3日目の6月8日。この日は帰りの時間に合わせて粟島港に集合することになっていたのですが、少し時間に余裕がありました。

そこで近くを散歩することにしたのですが、いつもツアーでお会いする島のお母さんにばったり。漁協のお手伝いにいくところでした。

貴重な機会なので作業を見学させてもらいました。漁協の方に「写真を撮ってもいいですか?」とお聞きすると「昨日、おと姫の湯に来ていた人でしょ? いいよ」とのこと。覚えていてもらえたことに、うれしくなりました。

見学を終えて粟島港に着くと、ツアー参加者さんがノートを広げていました。

こちらはツアー参加者のアイデアで生まれた、ツアーの思い出をつづる「一人娘日記」というもの。実は私も一緒にノートづくりをした1人。

「他の参加者さんも楽しんでくれるかな?」と内心ドキドキ……みなさんが楽しそうに読み、書きこむ姿を見て「つくってよかった」と思いました。今後のツアーでも「思い出を残したい」という方に続きを書いてもらえたらうれしいです!

出港のとき、今回も島のみなさんが大漁旗で見送りをしてくれました。回数を重ねる中でお顔のわかる方も増え、名残惜しさが一層強くなったように感じます。

お菓子づくり、種まき、観光、交流会など、楽しい思い出をふりかえりながら、島を後にしました。

ツアー参加者から見た、粟島の魅力と希望

今回は、ツアー初参加という秋山さんと、リピーターの田代さんにインタビューをすることができました!

ここからはQ&A形式で2人の思いを紹介します。

【ツアー初参加|東京都在住・大学3年生の秋山さん】

Q.ツアーに応募した理由を教えてください
旅行好きの両親と各地を訪れ、とくに気に入ったのが粟島でした。また、いくつかの島を旅するうちに興味が膨らみ、島の研究ができる大学に進みました。今回応募したのは「何か島に行くいい機会はないかな?」と調べたことがきっかけです。カルビーさんの取り組みが見つかり「いいな」と思ってツアーに申し込みました。


Q.参加した感想を教えてください
農作業は中学校での体験くらいで、土に触ったのも久々です。すごく暑かったのですが、畑では海から抜ける風が吹いていて、気持ちよく作業できたと思います。人口減少や高齢化で厳しさもあるところ、このような新しい取り組みがあると、将来への希望が持てるように思います。島で生まれた子どもたちはもちろん、離島留学の学生さんも、島で過ごした経験があると、持続的に関わる可能性が高くなるのではないでしょうか。


Q.個人的な旅行とカルビーツアーとの違いはありましたか?
普通の旅行では民宿など限られた人としか会えませんでしたが、ツアーでは島のお母さん、おばあちゃんなど、さまざまな人と会うことができました。畑作業ではみなさんの結束の強さと、和気あいあいとしているようすを体感。日常の一部にふれることができ、すごく面白い経験でした。


Q.他の島と比べて、粟島の印象はいかがでしたか?
海に面して家が密集している粟島に対して、大学で研究している奄美の島では集落は湾に点在する形。泊まった民宿でも違いを感じました。さらに、昔からの建物が残っているところも印象的です。島の方に聞くと「嫁いだところと自分の実家、どちらも空き家にならないようにしている」と話していて。「そうやって粟島の雰囲気を守っているのかな、素敵なことをしているな」と思いました。

【ツアー参加2回目のリピーター|神奈川県在住の田代さん】

Q.何度も応募している理由、粟島の好きなところを教えてください
粟島の空気感、おいしい食べ物、海にのぼるきれいな朝日、島の方々との温かい交流に惹かれます。それから農作業ができることも魅力です。普段は農作物に興味があっても、自分で育てるところまでいかなくて……でもツアーに参加すれば、旅行も島の皆さんとのふれあいも、農作業も全部できます。「なんて素敵なツアーだろう」と思って、募集を見つけると「行きたい」と心が動くんです。参加は2回目ですが、応募は4回目になりましたね。


Q.2回目の参加で、1回目との違いを感じましたか?
前回、2024年の種まきに参加したときは、畑の中で木の枝を拾ってから種をまいたんです。それが今回は、はじめから畑に畝(うね)ができていて「立派な畑になっている」と嬉しくなりました。作業は、進めていくうちに「こういうやり方だったな」と、1回目の感覚が蘇ってきました。


Q.ツアーならではの魅力はどんなところでしょうか?
普段住んでいるところは少し離れれば田んぼも畑もありますが、粟島みたいに高台で海が見渡せる畑ってなかなかないと思います。海を見渡せる畑で農作業をして、心地よい風を感じるのは、とても贅沢な時間です。個人の旅行ではなかなか体験できないことですよね。


Q.作業以外で楽しみにしていることは何ですか?
サイクリングで島を一周したいです。釜谷や八幡鼻の景色を見に行ってみたいですね。他には、島のお母さんたちと話しているとき、温かい気持ちになるのが嬉しいんです。そういう「会いに行きたい」と思える人と出会うことはなかなかないと思っていて。粟島に行きたい理由の1つであり、もしかしたらすごく大きな理由かもしれません。


今回のインタビューを通じ、個性的な集落や畑、島のみなさんとの温かな交流など、粟島の魅力をあらためて発見できました。

最初のツアーから4年目を迎えた2025年、これまでの歩みを引き継ぎつつ、新しい仲間と一緒に取り組んで行けることをうれしく思います。今年もどうぞよろしくお願いします!