2025/12/26

【収穫体験レポート】ファンからファンへ受け継がれてひろがる「一人娘」の可能性

2025年11月、粟島にて青大豆「一人娘」の収穫体験ツアーが開催されました。リピーターから新たにご応募いただいた方など15名の参加者が集い、2泊3日で行われたツアーの様子を、9度目のツアー参加となる新潟市在住のライター・ヤマシタナツミさんがレポートします。

ライター|ヤマシタナツミ
新潟市生まれ。新潟大学農学部卒。「人と地域の希望をつむぐ」をテーマに物語をかくインタビュアー兼取材ライター。記事のほか小説など、つたわるかたちを探索しています。

Webサイト https://www.yamashitanatsumi.com

9度目となる粟島ツアーに参加しました。収穫体験ツアーでの収穫の様子はこれまでのレポートでもお伝えしましたので、今回は新しい方法での「はざ」づくりを中心にご紹介。

さらにリピーターさんからの紹介で初参加されたご夫婦や、ゲスト参加されたお豆腐と生ゆばの専門店「湯河原十二庵」店主・浅沼宇雄さんへのインタビューをお届けします。

>>これまでのツアーレポートはこちら(記事一覧)をご覧ください

秋色に染まる粟島で、味噌づくりに挑戦

ツアー1日目の11月14日は天候に恵まれて、黄色や赤色に色づいた秋らしい姿の粟島を見ることができました。彩り豊かな島の風景に、収穫への期待が高まります!

島に到着すると、まずは公民館でオリエンテーションが行われ、ツアープログラムの説明、粟島浦村の特徴や観光の見どころ、「一人娘」プロジェクトの歩みを共有します。

自己紹介では、北海道、福島県、新潟県、群馬県、千葉県、神奈川県、愛知県、滋賀県の8地域から集まったツアー参加者が、それぞれの想いを語ってくれました。


【初めて参加した方】

「新潟生まれ新潟育ちですが、粟島に来るのは初めてなので、みなさんからいろいろと教えていただきたいと思っています」
「リピーターさんから『楽しいツアーだよ』と聞いて応募しました」

【リピーターさん】

「3回目の参加で、今回は味噌づくりをとても楽しみにしています」
「粟島のみなさんやカルビーのみなさんと交流して魅力を感じ、何度も参加しています」
「昨年に続き収穫ツアーに参加しました。元気をもらって帰りたいと思います」

※ツアー参加者のお声を抜粋して掲載しています

さらに今回は、スペシャルゲストとして来島された浅沼さんが長野県で生産された「一人娘」でのお豆腐づくりを実演。

カルビーの社員さんたちが浅沼さんと出会った、湯河原のお店「十二庵」でいただいたものと同じ、長野県産「一人娘」で作ったお豆腐を全員で試食しました。

「一人娘は香りと甘味が強く、余韻がしっかり感じられます」と浅沼さん。味わってみるとその通り、いつまでも大豆らしい風味が続く、濃厚な味わいのお豆腐でした。

今回は長野県産「一人娘」でしたが「粟島で採れた豆でお豆腐をつくったらどんな味になるんだろう?」と、気になります!

昼食後は島のお母さんたちの力をお借りして、味噌づくりを行いました。 味噌づくりの詳しい内容は、2022年の記事【収穫体験レポート】島ファンとカルビーファンで紡いだ、粟島「一人娘」物語や2024年の記事【収穫体験レポート】「みんなで生み出す楽しさ」が結ぶ温かい絆をご覧ください。

完成した味噌を専用容器に詰めて名前を書いたら完成!1日目のプログラムが終了し、ツアー参加者はそれぞれ宿泊する民宿へ向かいました。

なお完成した味噌は、約1年熟成させてからツアー参加者のもとに届く予定です。下の写真は2024年の収穫ツアーでつくった味噌。仕込んだ直後と比べると、ぐっと深みのある色になっています。味噌汁に入れたところ、溶かしやすく、だしの味を引き出してくれました。

この日に仕込んだ味噌が届くのは2026年の冬。到着が楽しみです!

新方式の「はざ」で生まれた意外な光景

ツアー2日目の午前中は収穫作業のため、バスで畑近くまで移動しました。畑には少し黒っぽい色の「一人娘」が見えて、熟しているのがわかります。

作業前に、おそろいの青いユニフォームで集合写真を撮影。その後は収穫した「一人娘」を乾燥させる「はざ」のつくり方を教わり、実際に挑戦してみることになりました。

過去の収穫ツアーと比べるとかなりコンパクトな竹製の「はざ」は、今回が初登場です。

【「はざ」のつくり方】
1.切り出した竹を3本組み合わせて片側の端を紐で結びます。
2.結んだ部分を上に、反対側を地面に差し込みます。
3.地面に近いところから紐を横に貼って竹に結びます。

三角の「はざ」がたくさんできたところで、収穫作業へ。機械で刈り取った枝を手作業で束ねます。ツアー参加者一人ひとりが工夫して作業を進めていきました。

束ねた枝は先ほどつくった「はざ」に立てかけて乾燥させます。枝に囲まれた「はざ」は原始時代の家のよう。これまでなかった新しい光景ができあがりました!

午前中の作業が終わり、昼食休憩後は自由行動に。

今回は夕日の時間帯に展望台をめぐる「夕日バスツアー」が大人気でした。夕日を楽しんだツアー参加者にいただいた写真をご紹介します。

こちらが小野章夫さん(上)と吉田真澄さん(左下)が撮影した夕日。

夕日が見られるのは本土と反対側。粟島港から見える景色とは少し違う、島のシルエットがきれいでした。楽しいバスツアーになったようで、何よりです!

粟島の恵みを囲んで乾杯!笑顔あふれる交流会

自由時間の後は、毎回好評の交流会です。今回は粟島名物「芋タコ」やワラサの刺身に加えて「一人娘」をすり鉢ですった「すり豆汁」までご用意いただきました!

料理を盛りつけ、好きな飲み物を手にとって、乾杯!交流会のスタートです。

今回も「グッズ争奪じゃんけん大会」が行われ「じゃーんけーん」とにぎやかな声が響きました。賞品をもらった後、早速おそろいのグッズを身につけて写真撮影も。楽しい交流の時間となりました。

振り返す手に「ありがとう」を込めて

ツアー3日目の11月16日、フェリー出港の時間がきました。大漁旗を振って見送ってくださる粟島観光協会のみなさんに向けて、ツアー参加者も大きく手を振り返します。今回のツアーと1年間の感謝を胸に、粟島を後にしました。

初参加者が語る、ツアーと粟島の魅力

今回で粟島「一人娘」ツアーの参加者数は延べ157人に。複数回参加されているリピーターさんも多く、今回初めて参加された原口さんご夫婦は、リピーターさんから話を聞いて応募したそうです。応募の経緯や、実際に粟島で感じたことを伺ってみました。


【北海道在住の原口さんご夫婦】

Q.ツアーに応募した経緯や、来る前に思っていたことを教えてください

(奥さん)
2025年3月にカルビー本社でのファンミーティングに参加して、粟島ツアーのリピーターさんとお会いしたのがきっかけです。「一人娘」のお話を聞かせてもらったのですが、キラキラの笑顔で「本当に楽しい」とおっしゃっていて。「秋は味噌づくりができるし、おすすめですよ」と教えてもらって、収穫ツアーに応募することにしました。


(旦那さん)
「奥さんに当選したから行く?」と聞かれて、畑作業をすることもわからない状態だったんですけど「行く」と答えて。出発の何日か前に、粟島にコンビニがないことを知って衝撃を受けました(笑)。

Q.参加した感想を教えてください

(奥さん)
粟島は、空気から他と違うような気がします。他の参加者さんも「肌の調子がいい」と言っていたんですけど、確かにそうだなと思いました。デトックスされていそうな感じですね。
「一人娘」の畑で驚いたのは、枝が木みたいに太くなっていたことです。実家の畑で枝豆を育てているのを見ていましたが、今回ほど太くはなかったので印象に残っています。収穫作業は、トマトの収穫のように「摘む」イメージでしたけど「木を束ねる」仕事でしたね。
「はざがけ」については「現代でも天日干しをしているんだ」と驚きました。私も「はざ」の竹を立てたり、紐を張ったりしてみましたが、難しかったです。
また畑では離島留学で島に来ている子どもたちに会えたのですが、すごく働き者でびっくりしました。足場の悪いところでも慣れているし、都会にいる子どもたちとは違うのかな、と思いました。


(旦那さん)
畑作業は良い経験になったと思います。こういったイベントでもないと、知らない人と一緒に作業をすることもないですし。私は不器用なので心配でしたが、思っていたよりもうまくできたように思います。

お豆腐づくりのプロから見た粟島と「一人娘」

ツアー1日目にお豆腐を提供してくださった、豆腐・生ゆばの専門店「湯河原十二庵」の浅沼さん。実は、カルビーの社員さんとの偶然の出会いをきっかけに、同行いただくことになりました。浅沼さんはどのような想いから来島されたのでしょうか。お豆腐づくりとの関係も含め、お話を伺ってみました。


【「湯河原十二庵」の浅沼宇雄さん】

Q.どのような想いで粟島に来られたのでしょうか?

(浅沼さん)
カルビーの社員さんたちが私の店に来られたとき、ちょうど長野県産の「一人娘」でつくったお豆腐をお出ししていたんです。そのときに「粟島にも『一人娘』がある」「島のばぁばたちと一緒に大豆をつくっている」と聞いて「『一人娘』を育てている粟島の人たちに会ってみたい!」と思いました。なぜそう思ったかというと、お豆腐づくりで豆のおいしさを実感していたからです。

Q.豆のおいしさを実感したときのことを教えてください。

(浅沼さん)
私は豆腐づくりを独学で始めたのですが、ある程度安定してつくれるようになったのは2〜3年経ってからでした。1年目や2年目の豆腐を振り返ると「ひどいものだった」「全然豆腐のことをわかってなかった」と思いますね。

ところが不思議なことに、1年目、2年目でつくったお豆腐も、お客さんが「おいしい」と言って買ってくれていたんです。その理由を考えたときに「農家さんが育ててくれた、豆のおいしさのおかげだ」と気づきました。それから、農家さんたちへの尊敬と感謝の想いが湧いてきました。

だから今回も「『一人娘』を育てている人たち、ばぁばたちに会ってみたい」と思ったんです。圃場を見てみたい気持ちもありましたが、それ以上に「どんな人がどういう気持ちで育てているか知りたい」と思って来た、という感じですね。

Q.粟島産「一人娘」のおいしさについてはどう思われますか?

(浅沼さん)
粟島産「一人娘」を試食させてもらい、同じ品種でも、育てる土地が変わると違ったおいしさになると感じました。だから、海の見える畑で潮風を受けながら育った粟島産「一人娘」でお豆腐をつくったらどんな味になるのか、とても興味があります。

島のばぁばに教えてもらったのですが、昔は粟島にもお豆腐屋さんが2軒あったらしいんです。でも2軒ともなくなり、粟島産大豆のお豆腐は食べられなくなってしまった。僕としては、粟島産「一人娘」のおいしさを知ってもらうためにも「お豆腐として食べていただきたい」と考えています。

「一人娘」を育てている皆さんとの出会いを求めて粟島に来た、浅沼さん。今回のツアーで結ばれた島とのご縁から、2026年には粟島産「一人娘」のお豆腐が食べられるかもしれません!




2つのインタビューを通じて、ツアーを続けることで生まれた新しい出会いやアイデアを発見できました。粟島の「一人娘」を見守る人が増え、持続可能な取り組みとなるように、今後もプロジェクトを伝えていきたいと思います!

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