地ものがたり
#15

集合写真

新潟県粟島-草取り・土寄せ
体験レポート-

「一人娘」の草取り・土寄せ体験レポート。
今回の粟島グルメは、
郷土料理・油味噌づくり!

粟島「一人娘」との出会いで見つけた、
人と畑の多様性

2023年7月、粟島で「一人娘」の草取り・土寄せ作業支援ツアーを開催しました。一般からの参加は、6月の種まきツアー昨年の収穫ツアーに参加いただいた方、新たにご応募いただいた方など15名。2泊3日で行われたツアーの様子を、3回目のツアー参加となる新潟市在住のライター・ヤマシタナツミさんがレポートします。

DAY1

地域も年齢も経験もさまざま。
個性豊かな仲間と三度目の粟島へ。
7月7日、三度目の粟島ツアーの日がきました!岩船港に向かうと、6月のツアー昨年11月のツアーでご一緒したみなさんに加え、初めて参加される方の姿も。声を掛けると、各地から集まったカルビーの社員さんでした。

社内報やWebで粟島「一人娘」プロジェクトの取り組みを知って興味が膨らみ、「参加したい!」と手を挙げたのだとか。カルビーさんの社内でも「一人娘」の輪が広がっているようで、うれしくなりました。

この日は風が強く、新潟や粟島に向かって中国から黄砂が飛んでくるほど。おだやかだった6月のツアーと比べると船の揺れが大きく、酔ってしまった人もいて、海に囲まれた粟島ならではの旅のはじまりとなりました。

オリエンテーション会場の公民館に着くと、6月には蕾の残っていた紫陽花が満開に。季節の移ろいを感じることができました。

粟島到着
粟島の公民館に向かう

会場には「miino一人娘」と絵本、Tシャツ、粟島の観光パンフレットが用意されていました。パンフレットを開いてみると「粟島グルメ」のページに、以前は載っていなかった「miino一人娘」の写真が!島を訪れる多くの方に「一人娘」のことを知ってもらえそうで楽しみです。

オリエンテーションではまず、2日目に予定していた草取り・土寄せ作業を1日目に行うアナウンスがありました。2日目が雨予報になってしまったため、急遽、この日の午後から作業できるよう調整いただいたそうです。

粟島観光協会の松浦さんからいただいた挨拶では「今年は昨年の2倍にあたる600kgを収穫できれば」というお話も。「一人娘」が昨年よりもたくさん実をつけてくれるように、草取りや土寄せをがんばろう!と思いを新たにしました。

miino一人娘グッズ・粟島パンフレット
オリエンテーションの様子

その後は粟島と今回のツアー内容を紹介していただき、最後にスタッフも含めて全員で自己紹介をしました。北は北海道、南は佐賀県と全国各地から集まった参加者は年代もさまざま。一人ひとりの個性や、ツアーへの思いが伝わってきました。

オリエンテーションの後は畑での作業に備えて、動きやすい服装に着替えました。6月はまだ小さな種だった「一人娘」の成長が楽しみです。

草取り・土寄せで見えてきた、畑の多様性。 作業場所に到着してすぐに、畑の近くまで行ってみると、そこには元気よく育った「一人娘」の姿がありました!日当たりが良いせいか雑草も元気。草取りのやりがいがありそうです。

畑の様子1
畑の様子2

「一人娘」と再会できたうれしさでほくほくしながら、集合写真を撮影しました。掛け声は「はい、miino!」です。このメンバーで草取り・土寄せ作業に挑みます!

集合写真

作業には、急な日程変更にも関わらず、島のみなさんも駆けつけてくださいました。経験の少ない私たちにとって、農作業をリードしてくださる島のみなさんはとても頼りになる存在です。

種まき2
種
種まき3
種まき4

みなさんの写真を撮影しながら畑を移動してお話を伺ううちに、おもしろいことがわかってきました。

ヨモギやスギナ

【開墾して1年目の畑】
土質は粗く、ところどころ塊があります。ヨモギやスギナのようなしっかりと根づく草だけ生えているようでした。

ヨモギやスギナ

【開墾して2年目の畑】
1年目と比較するとサラサラとした土質で、キメが細かい印象です。ヨモギやスギナなどに加えて、イネに似た細い葉の草も生えていました。

また、同じ畑の中でも「一人娘」が育ちやすい場所と、育ちにくい場所があることもわかりました。試しに私のスマートフォンと並べて葉の大きさを確認したところ…左の葉は右の葉の2〜3倍の大きさ。同じ時期に、同じ畑に種をまいたのに、これだけ差が出るとは思いませんでした。同じ畑でも場所によって、何かが違うようです。

スマートフォンと比較1
スマートフォンと比較2

草取りに慣れてきたかな、というタイミングでみんなで休憩。この日の気温は30℃近く、冷たい飲み物がとても心地よく感じられました〜。

休憩ドリンク
休憩時間の様子

休憩中には、農業指導担当の新潟県村上地域振興局の渡辺さんに「一人娘」の栽培方法について質問する参加者も。私も仲間に入れてもらうと、次のことがわかりました。

ちゃんと収穫するためには、ちょうどよく育てる工夫が必要なのですね。渡辺さんに教えていただいて、また少し「一人娘」について知ることができました。

「一人娘」について説明
「一人娘」

土寄せの大切さについてもわかったところで、いざ実践!

島のみなさんの手ほどきを受けながら鍬(くわ)をふるって、株の近くに土を寄せていきます。耕運機は、草取りと土寄せが同時にできる優れもの。人の手と機械、両方を使って、昨年の1.8倍ある畑の作業を進めていきました。

土寄せを実践1
土寄せを実践2

そしてようやく草取りと土寄せ作業が完了!
日差しの下で葉を輝かせている「一人娘」も、畑がととのって喜んでいるように見えました。

畑の様子3
畑の様子4

暑い中での作業は過酷な面もありましたが、参加者同士や、島のみなさんとの交流が生まれるなど充実した時間に。達成感いっぱいで1日目を締めくくりました。

DAY2

粟島の郷土料理・油味噌づくりは、味噌と味見がポイント。 2日目の午前中は「島のばぁば」と慕われているお母さんたちから「油味噌」という郷土料理を教えてもらいます。材料は油、玉ねぎ、味噌、砂糖(上白糖)の4つ。味噌は昨年のツアーでつくったものと同じ、「一人娘」を使った味噌です。

作り方はシンプルで、まず、油をしいたフライパンにカットした玉ねぎを入れ、透明になるまで炒めたら味噌を入れます。味噌と玉ねぎが一体になったら砂糖を投入。その後は玉ねぎの形がなくなるまでしっかりと煮詰めていきます。

「玉ねぎは炒めるとなくなるから、あんまり薄くなくていいよ」と教えてもらったので、参加者は「これくらい?」とばぁばに確認しながら、代わる代わる包丁を持って玉ねぎをカットしていきました。

味噌づくりの様子1
味噌づくりの様子2

ばぁばに「油味噌」づくりのコツを聞くと「自家製の味噌を使うこと」と返ってきました。不思議なことに市販の味噌でつくっても、あまりうまくできないのだそうです。

材料は重さで測るのではなく、味見をしながら量を決めます。「私の母もそうやってたしね。味見して、まだしょっぺーかなと思ったら砂糖を入れるの」とばぁば。味を見て、砂糖を足して、煮詰めて、という作業を繰り返しながら、油味噌をつくっていきました。

味噌づくりの様子3
味噌づくりの様子4

できたての油味噌をキュウリにつけて味見したのですが、相性抜群!他にどんな食べ方があるか聞いてみると、夏はナスや大葉を、冬は玉ねぎを和えたり、ご飯と合わせてチャーハンにすることもあるそうです。

畑の様子3
畑の様子4

最後は、油味噌をお土産として持ち帰れるよう、瓶詰めに。しっかりと煮詰められた油味噌はつやがあって、とてもおいしそう。ツアーの良いお土産ができました。

豊かな自然に育まれた食文化にふれ、粟島の未来に思いをはせる。 油味噌づくりの間に、食事会兼交流会「ばぁばキッチン」のための食材が届いていました。一つは保冷ボックスいっぱいのサバ。もう一つはカスベ(エイ)。島の漁港で水揚げされたものを、今回料理するために確保してくださったそうです。

サバ
カスベ(エイ)

油味噌づくりの後、自由時間を楽しんでから公民館に戻ってくると、料理ができあがっていました。ツアー常連の参加者さんは、料理もお手伝い。島のばぁばたちとも、すっかり打ちとけた様子でした。

できあがった料理を盛りつける前に、メニューを紹介いただきました。今回、酢の物は「当たりつき」で運がよければサザエが入っているとのこと。盛りつけも楽しみになりました。

食事準備の様子1
食事準備の様子2

料理はビュッフェ形式で各自盛りつけていきます。左上の小皿が、カスベの煮つけ。ワンプレートには、サバの竜田揚げ、ポテトサラダ、タケノコの炒め物、ギンバソウとマダラの卵の煮物、キュウリの酢の物に、紫玉ねぎの甘酢漬け。そしてタケノコご飯と「一人娘」の味噌を使った味噌汁。飲み物はビール、チューハイ、ソフトドリンクに加え日本酒もありました。

酢の物
食事

料理と飲み物がそろったところで、かんぱ〜い!
ツアーをふりかえりながら楽しく語り合いました。

乾杯写真

「ばぁばキッチン」の終盤、恒例になりつつある、感想シェアの時間に。「粟島の食の豊かさに感激した」「島のお母さんと一緒に料理できてうれしかった」「農作業で土に触れられてよかった」など、一人ひとりの心に響いたものを知ることができました。ここではみなさんからの感想をテーマごとにご紹介します。

そして「一人娘」プロジェクトの発起人である、カルビーの藤東さんから、締めくくりの言葉が。「みなさんのおかげで成り立っている企画だと思いますし、これを続けることで粟島にいいことが起こるんじゃないかと信じています」。

人口減や生産者不足など、全国各地で起きている課題は粟島にも当てはまります。私も引き続き「地域を越えてつながり解決していく」という思いで関わっていきたいです。

最終日、7月9日の朝、帰りの船に乗るために港に行くと、島の皆さんも来てくださっていました。昨年の収穫、6月の種まき、今回の草取りと、回を重ねるごとに名残惜しさが増すようです。お話して、手を振って、感謝の思いを伝えました。

港にて島の皆さんと
船から見送りの様子

今回の粟島ツアーでは、往路の船が揺れたり、雨模様だったり、思い通りにならない自然の力を実感しました。そんな中でも無事に草取りと土寄せを終えることができたのは、粟島のみなさん、ツアーを企画したみなさん、そして参加者と、背景や立場、興味関心もさまざまな多様な人たちの力が合わさったからだと思います。これからも「一人娘」栽培を続けていくため、みんなで力を合わせていきたいです。

ツアーを終えた2日後、参加者の方から「自宅のプランターに植えた『一人娘』に花が咲きました」と写真をいただきました。淡い紫色のかわいらしい花です。粟島の畑の「一人娘」も花を咲かせて、実をつけてくれますように。

「一人娘」の花1
「一人娘」の花2

さて、次回11月の農業支援ツアーではいよいよ収穫を行います。みんなで見守ってきた2023年の「一人娘」物語は、どんなゴールを迎えるでしょうか。

引き続きレポートしていきますので、一緒に見届けてもらえたらうれしいです!

粟島PROJECTページはこちら

WEBサイト https://www.calbee.co.jp/hitorimusume/index.php
ヤマシタナツミ

ライター

ヤマシタナツミ

新潟市生まれ。新潟大学農学部卒。「人と地域の未来をつむぐ」をテーマにライティング、イラストレーション、小説創作をしています。

WEBサイト https://www.yamashitanatsumi.com
粟島 種まき体験レポート

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