「荒廃農地をほっとけない」から始まったじゃがいも栽培

↑休耕水田から転作したじゃがいも畑を眺める大崎さん、土井さん。この広さの畑は県内ではなかなかない規模だそうです。


農事組合法人 おおしお北部は宮城県東松島市にある農業法人で、2017年からカルビーのじゃがいもを栽培いただいています。
*収穫前の畑の様子はこちら→ 宮城東松島 ~おおしお北部さんの畑より

そのきっかけは“荒廃農地を再生し良好な景観に戻したい”という思いから始まったそうです。
地域の問題からじゃがいも栽培につながった経緯などを代表理事の大崎さん(写真右)、農業部主任の土井さん(写真左)にお話しいただきました。

*荒廃農地とは・・・「現に耕作に供されておらず、耕作の放棄により荒廃し、通常の農作業では作物の栽培が客観的に不可能となっている農地」のこと。(出典:農林水産省HP より)

―荒廃農地の取り組みを始められたのはどんな理由からですか
大崎さん :高齢化で長年放置された農地が増えていました。荒れた農地をそのままにしておけば草木が生い茂り竹藪となりやがて山林となる。いつかは自然に還っていくことも必要かもしれないけれど、できるうちは景観を良くしていきたいと2015年におおしお北部を立上げ、取組みを始めました。

初年度は約1haほどの荒廃農地を整備しました。土地の所有者に交渉して雑草や雑木をバックホー(ショベルカー)やチェーンソーで取り除き、地力を向上させるために大豆を作付けました。

 

雑草が生い茂れば、景観が悪くなるだけでなく不法投棄なども呼び込んでしまう…。景観を良くするということは美観のためだけでなく地域を守ることにつながります。

*全国の荒廃農地は、平成20年(2008年)からの調査によると増減を繰り返しながら令和2年(2020年)は約28.2万ha、令和3年(2021年)は減少の26.0万haとなりましたが、おおしお北部のような取り組みで解消された荒廃農地もあれば、新たに発生した荒廃農地もある現状です。
(参考:農林水産省HP 荒廃農地の発生・解消状況に関する調査結果等より

↑草が生い茂っている様子。写真(右)の右側奥の手入れされている田畑と比べると。その差がわかります。

↑雑草や雑木を取り払い整地したところ。撮影地点は少し異なりますがこんなに広いところだったのですね。

↑再生後は大豆を栽培し土壌回復を試みたそうです。
(出典:東北農政局HP内、取組み事例より)

―活動3年目にじゃがいも栽培を開始いただいたそうですが、どんなきっかけがあったのでしょうか
大崎さん :再生した農地に加え高齢化・担い手不在により離農する農家が増え、現在は113haを経営しています。
この面積を少ない労働力で持続的に経営するには機械化が必要で、大型機械でできる作物が向いていると思いました。それに適した作物を検討していたところ、隣町でカルビー契約農家をしている方からの紹介をきっかけにじゃがいも栽培を始めました。じゃがいもは収穫後カルビーポテトに納品すればよいですし収益の目途も立つ点も助かっていますね。

土井さん :高齢化で農業を離れる方は先祖代々から伝わる田畑を無くせないという心情がありますが、山地や低い土地で条件が良くないところ、小さい面積で機械が入らないところからどうしても手が離れていきます。
そういった農地を整備してつなげて一枚の田畑が広くなったことで、じゃがいも栽培ができるようになったと思います。

大崎さん :この田んぼも所有者に畦畔(*)を取り除く許可をもらい、大きな畑にすることができました。1枚の畑が大きくなれば、北海道で使うような大型機械も入ることができる。本州もそういう需要があると思います。


*畦畔(けいはん)・・・水田に引いた水が外にもれないように、水田を囲むように作った盛土部分をいう。水田区画の境界や通行や農作業のための役割もある。

 

―これからの農業について
大崎さん :昔はこの地域は米の他に葉タバコを栽培する農家が多かったけれど、時代の移り変わりで減少しています。平地のイチゴやトマトなどハウス栽培をやっている地域の農家は若い人の就農もあり後継者も育っているようですが全体としては就農人口は減っています。
時代で求められる作物も変わりますし、荒廃農地を引き受け労働力が少ない中経営するには、拡大した分をITや大型機械で補う必要があり、それにあわせて栽培する作物も変わります。
担い手もそれぞれ高齢化していくのでコントラクター事業のような作業受託ももっと発展していくといいですね。

↓北海道でみる大型のトラクターと収穫機ハーベスター。8月のじゃがいも収穫に向け整備済!

↓白い袋で積まれているのは牧草。畑が広く大型機械で効率化を図れることから、じゃがいもの裏作に牧草栽培を加える二毛作体系で農地を有効利用している。近年の飼料価格の高騰で牛の飼料としての需要も増えているそう。

↓カルビーポテトのフィールドマンと打合せの様子。じゃがいも栽培だけでなく県内外の情報がとても参考になる、とおっしゃっていただいています。

―今年のじゃがいも栽培面積はどれぐらいですか
土井さん :オホーツクチップを20ha、トヨシロを7ha、の計27haです。今年も地域の生産者限定ポテトチップスになるようです。楽しみですね。

―おおしお北部さんは宮城県内でも最大の面積を栽培いただいているそうですね
大崎さん :私たちの取組み事例をきっかけに宮城県でもじゃがいも栽培が広がればとカルビーポテトさんにも期待いただいているようです。

~参考~ 農業従事者数グラフ
2023.03掲載記事 “コントラクター事業”って何?より
2000年から2020年までの5年ごとの農業従事者数をグラフにしたもの。この20年で農業に従事する人が43.3%減と半分近くの減少になっているのがわかります。食糧自給率の水準(*)からも、農業従事者の確保および収入の安定化、労働負荷の軽減は喫緊の課題です。
*グラフデータ出典:農林水産省HP > 農業従事者数の変化より
*(*)食料自給率データ:農林水産省「令和2年度日本の食糧自給率

 

―『じゃがいもDiary』をご覧の皆さんにメッセージをお願いいたします!
大崎さん土井さん :昨今、大雨被害により収穫量が不安定でたいへんですが、自然を相手にしている農業では当たり前の事と捉え、被害を最小限に抑える努力や工夫を徹底しながら品質の良い馬鈴薯作りに取り組んでいきたいと思います。


コメント(2)

  • 投稿者 | じゃが
    農家の皆様の取り組みに頭が下がる思いです!
  • 投稿者 | じゃがいも
    いつもありがとうございます!

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