研究成果
(学会発表・研究論文)
研究論文
じゃがいもの皮から抽出した「ポテトセラミド」の摂取による肌への有効性を確認
―未利用資源である「じゃがいもの皮」から新たな価値を創出―
2022. 6. 27
[背景]
近年、季節の変わり目などに一時的に肌トラブルを感じる人が増加しています。この原因として,大気汚染や気候変動などの環境変化が大きく影響しています。皮膚は、外部からの有害な環境物質や微生物の侵入を防ぎ、体内からの水分蒸散を防ぐ優れたバリア機能を持っています。健やかな皮膚を維持するためには、皮膚の最外層である角層のバリア機能(=うるおいを守る機能)を強化させることが重要です。現在、様々な植物由来グルコシルセラミドの機能性に注目が集まっています。健常者において、米やこんにゃく、そしてパイナップル由来のグルコシルセラミドを経口摂取すると、皮膚バリア機能を改善することが報告されています。
私たちは、産業廃棄物削減のゼロエミッションを目指す観点から、じゃがいもを加工する際に発生する「皮」の新たな有効利用法を探索しています。じゃがいもの皮には、100 gあたり約20 mgのグルコシルセラミドが含まれていることから、じゃがいも由来のグルコシルセラミド(=ポテトセラミド)も皮膚バリア機能改善作用を示し、新たなセラミドの供給源となりうることが期待されます。
目的
肌の乾燥を自覚する健康な日本人の成人男女を対象に、ポテトセラミド含有ソフトカプセルを12週間摂取することによる肌機能に及ぼす影響について検討しました。
研究内容
【方法】
試験期間を12週間とし、30歳以上60歳未満の肌の乾燥を自覚する健康な男女80名を、プラセボ食品摂取群40名と被験食品(ポテトセラミド)摂取群40名に分け、ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験を行いました。それぞれの群にプラセボ食品、またはポテトセラミド1.8 mgを含む被験食品を摂取してもらい、0週、4週、8週、12週目に、皮膚の評価(経表皮水分蒸散量、粘弾性、体感Visual Analogue Scale(VAS)アンケート)を行いました。
有効摂取量(1粒/日)を12週間摂取し、肌への影響を確認する試験
【結果】
皮膚バリア機能の指標である経表皮水分蒸散量について、頬部での変化量において、ポテトセラミドの摂取により摂取12週後で有意な低下が認められました。さらに経表皮水分蒸散量が25.0 g/hm2未満の被験者(被験食品群24名,プラセボ食品群24名)を対象に層別解析を実施したところ、ポテトセラミドの摂取により、頬部での実測値において有意な改善が認められ、「肌のうるおいを守る効果」が確認できました(図1)。
皮膚の弾力指数R2が摂取12週後において、ポテトセラミドの摂取により有意な増加を示しました。これより、ポテトセラミドが「皮膚の弾力の維持」に寄与することが明らかとなりました(図2)。
さらに、体感性を評価するVASアンケートにおいては、「総合的な肌状態」が摂取12週後で有意に改善しました。ポテトセラミドは体感性の高い素材であることが示されました(図3)。
まとめ
以上より、ポテトセラミドは、肌のうるおいを守り、肌の弾力を維持することによって、健やかな肌状態を維持し、「総合的な肌状態」の改善を実感することでQOLを高めることが期待されます。