研究成果
(学会発表・研究論文)

  • 学会発表

ポテトチップスの製法はジャガイモの栄養素(ビタミン)の損失が少ない加工法であることを確認
「ポテトチップス中の水溶性ビタミン含有量」
日本調理学会平成19年度大会においてカルビー株式会社基礎研究チーム発表
2007.08.31

背景

従来は嗜好性が第一に求められた菓子類においても、近年の健康意識の高まりとともに、栄養素などの情報提供が要求されるように消費者の意識が変化してきました。ジャガイモはビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養素を豊富に含んだ食材であり、すでに多くの報告がなされています。しかし、その多くは未調理の生芋、もしくは水煮など比較的温和な条件下で調理された食品に関するものです。ジャガイモを薄くスライスして高温下でフライ加工したポテトチップスにも、ジャガイモ由来の栄養素が豊富に含まれていることがわかっていますが、加工条件の影響についての報告はあまりありません。

目的

ジャガイモに含まれる栄養成分の1つに水溶性ビタミンがあります。水溶性ビタミンは熱に弱いものが多く、高温下でのフライ加工中に熱分解によって損失することが予測されます。しかし一方で、ジャガイモの水分が蒸発することによって固形分の濃縮が起こり、含有量が増加することが期待されます。
カルビー基礎研究チームでは、ジャガイモ中の水溶性ビタミン(ビタミンB1、B2、B6、ナイアシン、葉酸、パントテン酸、ビタミンC)に着目し、ジャガイモからポテトチップスに加工する際の含有量の変化について調査しました。

研究内容

皮を剥いたジャガイモは、スライサーにて薄く切断され、切断面に残った澱粉などを除くため水洗いします。この水洗によって損なわれる栄養素の損失量を調べました。また、フライ加工によって栄養素の含有量にどのような変化が生じるかを調べました。
図1.水洗による水溶性ビタミン含有量の変化
水洗によって損なわれる栄養素の損失量を調べるため、スライス片の100倍量の水中にてスライス片を2分間撹拌し、水洗前後の水溶性ビタミン含有量を測定しました。また、20、50、80℃の水温での損失量を測定し、水温の影響を比較しました。水洗前のジャガイモスライス片をコントロールとし、この水溶性ビタミン含有量を100%とした場合、各水温での水洗後のスライス片に含まれる水溶性ビタミン含有量の相対値を示しました。
図2.フライ前後の全重量当たりのビタミン含有量比
フライ前を100%として、全単位重量当たりに含まれる水溶性ビタミン含有量を相対値で表し、比較しました。

まとめ

[ 1 ]  ジャガイモスライスを水洗する場合、水温が高いほど水溶性ビタミンの流出量が増加することがわかりました。デンプンの糊化温度を超えるような水温の場合では半減する成分もみとめられました。
[ 2 ]  フライ加工によって熱、酸化安定性の弱い成分は半減するものもありましたが、脱水による濃縮効果の方が大きく影響し、全重量当たりで比較するとジャガイモよりもポテトチップスの方がいずれの水溶性ビタミンでも高含有量でした。
つまり、ポテトチップスの製法はジャガイモの栄養素の損失が少ない加工法であることが確認されました。

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