研究成果
(学会発表・研究論文)

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じゃがいもの皮エタノール抽出物をマウスへ経口投与した結果、腸管免疫のバランスを調整する作用を確認
じゃがいも皮抽出物の経口投与によるマウスパイエル板細胞のサイトカイン産生への影響
日本農芸化学会2014年度大会において、日本薬科大学とカルビー株式会社との共同研究として発表。
2014.03.28

背景

じゃがいもの塊茎についてはこれまでビタミンC、葉酸、ビタミンB群、カリウム、クロロゲン酸など様々な栄養成分や機能性成分が含まれていることが報告されています。しかしながら、可食部以外の有用成分については未知の部分が多く、私たちはこれらを「未利用資源」として新規機能性成分の探索を進めています。

目的

今回は塊茎の皮に着目し、皮エタノール抽出物をマウスへ経口投与して、小腸パイエル板細胞の各種サイトカイン*産生への影響について検討しました。
*サイトカインとは…細胞から放出される情報伝達物質で、標的細胞にシグナルを伝達し、細胞の分化・増殖・機能発現に関わっています。

研究内容

腸管には体内の全免疫細胞の60~70%が存在しており、体内最大の免疫組織である腸管免疫組織を構築しています。この腸管免疫において重要な役割を担っているのが「パイエル板」です。
パイエル板には「M細胞」と呼ばれる「抗原を体内に取り込む細胞」が存在しています。さらにその下には「抗原提示細胞」や「免疫担当細胞」が集合しており、腸管内の抗原に対して腸管免疫応答を引き起こします。
図1


免疫反応の制御において中心的な役割を担い、免疫反応の司令塔とも言われている細胞が「ヘルパーT細胞(Th細胞)」です。Th細胞は、産生するサイトカインの種類によって、Th1細胞、Th2細胞、Th17細胞、Treg細胞の大きく4つに分類されます。この4つの細胞は、それぞれの細胞が産生するサイトカインによってお互いを制御し合っており、通常はバランスを保ちながら適切な免疫応答を行います。しかし、この腸管免疫のバランスが崩れると様々な自己免疫疾患やアレルギー疾患が発症すると考えられています。

図2


今回は、それぞれのT細胞から産生される代表的なサイトカインである「IL-2」、「IL-4」、「IL-17」、「IL-10」を測定し、マウスに皮エタノール抽出物を経口投与した場合に、腸管免疫のバランスがどのように変化するか調べました。
その結果、皮70%エタノール抽出物および皮100%エタノール抽出物の投与により、コントロールと比べてIL-2産生量は有意に増加しました。IL-4およびIL-17産生量はコントロールと比べて有意に減少しました。IL-10産生量については、コントロールと比べて変化はみられませんでした。

図3

まとめ

じゃがいもの皮エタノール抽出物を経口投与したところ、腸管免疫のバランスをTh1優位にする作用があることが示唆されました。免疫バランスがTh1優位になると、アレルギー状態が緩和されることが知られています。つまり、じゃがいもの皮は抗アレルギー効果が期待できる成分を含むことが分かりました。
図4

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