研究成果
(学会発表・研究論文)

  • 学会発表

じゃがいもの未知なる機能性を探索
じゃがいもの新規機能性成分探索に向けたフラクションライブラリーの作製
日本農芸化学会2017年度大会において、理化学研究所とカルビー株式会社との共同研究として発表。
2017.03.19

背景

じゃがいもは食用として世界中で栽培されている植物であり、可食部である塊茎は、デンプンを主成分とし、機能性成分としてビタミン類やクロロゲン酸などのポリフェノール類を含んでいます。しかし、じゃがいも特異的に含有されるような機能性成分の研究が本格的に行われた例はありません。また、一般的に食用として利用されている部位は塊茎のみであり、葉や茎など可食部以外の部位については利用されていません。このようなことから、私たちはじゃがいもの未利用部位に含まれる新規機能性成分の探索を行い、その有効活用法を検討しています。

目的

品種や産地、部位の異なるじゃがいもサンプルより約1,700のフラクションライブラリーを作製し、じゃがいもに含まれる新規機能性成分の網羅的な探索を検討しました。

研究内容

新規機能性成分を探索するにあたり、フラクションライブラリーという手法を用いました。フラクションとは、抽出物をMPLC*やHPLC*を用いて、系統的に分画・粗精製したものです。そして得られたフラクションを、化合物探索や活性評価に用いやすく整備したものをフラクションライブラリーと呼びます。抽出物をフラクションに細分化することによって、微量成分を優位に評価・検出・探索することができます。本研究で用いたじゃがいもサンプルは、北海道と茨城県の2つの産地より採取しました。8品種を用い、それぞれ花、葉、茎、根、塊茎皮、塊茎の6つの部位に分け、試験サンプルとしました。
*MPLC…Medium Pressure Liquid Chromatography(中圧液体クロマトグラフィー)の略。*HPLC…High Pressure Liquid Chromatography(高速液体クロマトグラフィー)の略。多くの夾雑物を含む試料から種々の成分を分離し、定量・定性する装置。
図1
フラクションライブラリーは以下のようにして作製しました。
まず、じゃがいも各部位の凍結乾燥物をメタノールで抽出し、抽出物を調製しました。続いて、抽出物の一部をとり液液分配を行い、極性および酸・塩基性度の違いによって、抽出物を7つの可溶性画分に分けました。さらに各可溶性画分をMPLCにより分画し、現在までに約1,700フラクションを作製しました。全てのフラクションについて、DAD*-LC/MS分析と各種活性評価を行いました。これにより、各フラクションにどういった成分が含まれているか、また一方でどういった機能性を有しているのかを調べることが出来ます。そして、この成分情報と機能性情報の2つを総合することで、新規機能性成分の探索を行います。
*DAD…Diode Array Detector(ダイオードアレイ検出器)の略。LCの検出器で、紫外・可視域に吸収を持つ成分が測定対象となる。広い波長範囲の情報を一度に取り込むことが出来る。
図2
図3
こちらが活性評価の内容です。各種動物細胞に対する増殖抑制効果、抗菌活性および抗マラリア活性を評価しました。
図4
抽出物と分配抽出物を合わせると全部で240の抽出物がありますが、このうち約4割の抽出物が何らかの活性を示すことが分かりました。特に、強いがん細胞増殖抑制効果を示したのは花の抽出物でした。花の抽出物の成分情報を解析すると、グリコアルカロイドであるソラニン/チャコニンという成分が他の部位と比較して多く含まれることが分かりました。このことからグリコアルカロイドが活性成分の一つであることが考えられます。また、皮の抽出物には他の部位と比較して強い抗マラリア活性が確認されました。こちらの活性成分は現在検討中ですが、じゃがいもが抗マラリア活性を示す成分を含むということは今までなかった知見です。
図5
さらに、塊茎よりリゾリン脂質類を、皮よりトリテルペン類を単離しました。リゾリン脂質は、じゃがいもの極性脂質として報告されています。トリテルペン類は、アポトーシス誘導作用などの報告があり、近年その機能性が注目されています。しかし、このような成分について、じゃがいもからの単離報告はこれまでになく、今回が初めての報告になります。このように、フラクションライブラリーを用いることで、従来報告のなかった成分を探索することが可能になりました。
図6

まとめ

品種や産地、部位の異なるじゃがいもサンプルよりフラクションライブラリーを作製し、じゃがいもに含まれる新規機能性成分の網羅的な探索を検討したところ、これまでに報告がなかった機能性や新規の成分を発見することが出来ました。

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