研究成果
(学会発表・研究論文)
学会発表
複数のプレバイオティクス混合グラノーラ摂食は主観的ストレスと眠気を改善する
2025. 5. 25
[内容]
睡眠不足や睡眠の質の低下は様々な疾患のリスクを高め、特にストレスを起因とした睡眠の質の低下が問題視されています。また腸内細菌叢と脳機能との間には「脳腸相関」と呼ばれる相互作用が知られています。本研究では、ストレス状態にある健常人を対象に、複数のプレバイオティクスを含むグラノーラを摂食することで、腸内細菌叢を介してストレスによる睡眠の質の低下を改善できるか検討しました。その結果、プレバイオティクスを含むグラノーラの摂取は主観的な睡眠の質を改善および心身のストレス状態が緩和する可能性が示唆されました。「複数のプレバイオティクス混合グラノーラ摂食は主観的ストレスと眠気を改善する」
第79回 日本栄養・食糧学会大会においてカルビー株式会社と株式会社S’UIMIN、筑波大学との共同研究成果として公表されました。
目的
睡眠不足や睡眠の質の低下は様々な疾患のリスクを高め、特にストレスを起因とした睡眠の質の低下が問題視されています。腸内細菌叢と脳機能との間には「脳腸相関」と呼ばれる相互作用が知られています。プロバイオティクスと睡眠の研究は多いもののプレバイオティクスと睡眠の研究報告はまだ少ないです。そこで、本研究は、複数のプレバイオティクスを含んだグラノーラを摂食することで、腸内細菌叢を介してストレスによる不眠を改善できるかどうかを検討することを目的としました。
方法
116名の被験者を募集し、職業性ストレス簡易調査票(BJSQ)で高ストレス者と判定された人などの基準から27名の被験者を選抜しました。この27名の被験者に6種のプレバイオティクス素材が混合されたグラノーラを、8週間毎日、朝食に食べてもらいました。被験者には試験開始0,4,8週目に睡眠時脳波、起床時睡眠感調査票(OSA-MA)、アテネ不眠尺度、エプワース眠気尺度、総合気分状態(POMS2)、排便状況に関するアンケートに回答してもらいました。また、糞便を採取し、腸内細菌叢の解析も実施しました。
結果
プレバイオティクスを含むグラノーラを摂取した前後で腸内細菌叢を調べると、Bacteroidesが減少し、Bifidobacteriumが増加していました(図1)。
図1. プレバイオティクス素材含有グラノーラ摂取による腸内環境の変化

睡眠の調査では、アテネ不眠尺度の低下、OSA-MAの内、起床時眠気・入眠、睡眠維持の項目でスコアの改善が見られ、主観的な不眠が改善された可能性が示唆されました(図2)。
図2. プレバイオティクス素材含有グラノーラ摂取による主観的睡眠評価の変化

職業性ストレス簡易調査の結果ではA、B、C領域のいずれの領域もスコアの改善が見られ(図3)、POMS2の結果では抑うつ感、疲労感・無気力感の軽減により気分状態が改善していました(図4)。プレバイオティクスを含むグラノーラの摂取が心身のストレス状態を緩和させた可能性が示唆されました。
図3. プレバイオティクス素材含有グラノーラ摂取によるストレス状態の変化

図4. プレバイオティクス素材含有グラノーラ摂取による気分状態の変化

これらの結果を用いて重回帰分析を行うと、Bifidobacteriumとアテネ不眠尺度、総合気分状態で関連傾向を示し、職業性ストレス簡易調査票との間で有意な関連が見られた。この結果よりプレバイオティクスを含むグラノーラを摂食することによってBifidobacteriumが増加し、心身のストレス状態と主観的な睡眠状態を改善する可能性が示唆されました。
まとめ
プレバイオティクスを含むグラノーラによる腸内環境の改善が睡眠やストレス状態などの脳機能へも作用をもたらし、人々の健康維持につながることが期待されます。